「…あ…、林檎、ありがとうございました。美味しかった、です。」

言いながら、軽く頭を下げる。

その私の様子を、ぽかんと眺めたあと、

ふっ、って笑った、林檎のひと。

「なんだか、ひどく傷ついたみたいな顔してますけど、大丈夫ですか?」

しゃがみこんだまま、下から私を見つめた。

「…大丈夫…じゃないかも、しれません」

本音がポロッと口をついた。

数回、それもすれ違った位の相手だから、素直になれるのか、それともこのひとが穏やかな雰囲気を纏っているからなのか。

雨の音しかしない、ドラッグストアの前。

ココロの中を見透かされる、夕方。