「…律さん、好き、です」

いつも律さんには、素直でいよう。

思っていたら、するっと口をついて出た、気持ち。

そんな私を、いつものように余裕な笑顔で見つめた、律さん。

「知って、ます」

言いながら、私の頰を撫でる指先。

ぬくい優しさが、頬から溶けて全身を包んでゆく。

もし、優しさが見えるんだったら、安心するのに。

相手のほんとうに思っていることがわかれば、失敗なんてしないのに。

律さんに出逢うまではそう、考えていた。

つねに、相手の気持ちを推測して、先回りして考えて。

自分の気持ちなんて、二の次で。

そんな風に毎日を過ごせば、波風なんて立たない。

そうやって、私の人生は終わっていくんだと思っていた。