「あ、でも、ひとつだけ、これだけは約束してください」

「…やく…そく…?」

戸惑うような表情を浮かべる、律さん。

「毎晩、23時になったら、私を呼んでください。ひとりでひとりきりで泣かないでください。

だってそんなの寂しくないですか?

さっき、とても寂しそうに見えたから。だってだって、律さんにはいつも、私が、います」

私は律さんを決して、傷つけません。

律さんが私に約束してくれたように、私も律さんと約束する。

指切りのために差し出した私の右手の小指。

律さんが上げかけた右手が、空中で彷徨っている。