「…どうして、あなたが、泣くの…?」

困ったような、律さんの目。

「…何だか、律さん、哀しそう…」

呟けば、

「じゃあ、あっためて?哀しいことなんか全部、忘れるくらいに、あなたをください…」

「心配しなくても、私のすべては律さんのもの、です」

しっかり結ばれた律さんの左手と私の右手。

絡まって、ひとつになって、もう2度と離れなくなればいい。

お互いの左手薬指に、光るリングも、髪も目も鼻もくちびるも、頬も首筋も。

すべてが引っ付いて、離れなくなればいい。

玄関のドアの裏で、響く雨音。

まるで、律さんが泣いているみたいな、音がする……。