「…あ、結婚式、しなかったので」

少し俯いた私に、

「そうですか…いつか、出来るといいですね」
 
「はい」

一瞬、時が止まる。

ふたりで見つめ合う。

「…えっ?!」

「…えっ?!」

同時に我に返って、ふたりで焦る。

こんな瞬間も、シアワセ。

「あの、宜しければご試着していただけますよ?」

黒いスーツの会場の女性に声を掛けられた。

「いえいえいえいえいえいえいえいえっ!!」

両手を胸の前でぶんぶん振る私に、

「いやいや、いえいえって何回言うんです?」

なんて、また拳を口に当てて笑う律さん。