「…律さん、律さん。どうして初デートの日に、能力思いっきり、発動しちゃったんですか?」

「…いやー、さすがですね、オレ」

なんて、自画自賛しているけれど…

「すごい、どしゃ降りですねぇ」

無茶苦茶楽しみにしてる日に限って、いっつも降っちゃうんですよねぇ、雨。

テーブルに組んだ両手の上に顎を載せて、少し首を傾げながら、外の雨を眺めている、雨男の律さん。

楽しみ、だったんですよ。すごく。

ちいさく重ねられた律さんの言葉が、ゆっくり私の中に染み込んでゆく。

それは今、目の前にあるあたたかなミルクティーにゆっくり混ざる、ミルクのようで。

冷えた体をあたためてくれる。

「ちいさなシアワセ」その名前通りの、私と律さんの始まりをつくってくれたカフェで、つかの間の雨宿り。

どしゃ降りの雨なんかに、負けてやらない。

私と律さんの、ちいさなシアワセ。