あやかし戦記 葛藤の炎

「グアァァァァァ!!」

恐ろしい悲鳴のような声を上げながら、ニコラスは手を振り上げる。レオナードが素早く鎌で応戦し、イヅナもニコラスの動きを止めようと足を中心に斬り付けた。

夜明けまでまだまだ時間がある。人間と妖、どちらが体力の限界を先に迎えるか想像するのは容易いだろう。

攻撃を避けるだけでも、人間はかなりの体力を使う。ニコラスの攻撃を避けながら攻撃するのは、体力の消耗が思っていた以上に激しく、一時間もしないうちにレオナードとイヅナは肩を大きく上下に動かし、ゼエハアと荒い息を吐き始めた。

「ダメだ、もう矢がない!」

同じタイミングでヴィンセントの矢がなくなり、ニコラスが今度は足でイヅナとレオナードを攻撃しようと動く。筋肉質で太い足で蹴られれば、骨の一本や二本簡単に折れてしまうだろう。イヅナに冷や汗が浮かぶ。

ソフィアたちは木の陰から飛び出してこないものの、戦いの行方を見守っているようで、緊張した空気が伝わってくる。