あやかし戦記 葛藤の炎

「ニコラスさん!!あんたが今襲おうとしてるのは、自分の大事な生徒だぞ!!」

レオナードが子どもたちの間に立ち、戦鎌を構えて威嚇する。イヅナは「みんなはこっちに隠れて」と木の陰にソフィアたちの手を引いて連れて行く。

「ね、ねえ、あの化け物はニコラスって名前なの?狼人間でしょ?」

マルクルが体を震わせ、カイルも「ニコラスって先生のこと?」と鋭い目で問いかける。イヅナが何と答えればいいかわからず黙っていると、「ねえ」とソフィアに言われながら胸ぐらを掴まれる。

「あんたたちが何者か全然わかんないし、どうなってるのかもわからない。でも、先生を助けてくれなきゃ許さないから」

「最善を尽くすわ」

ソフィアに睨まれ、イヅナは真剣な顔で返す。そして絶対に動かないように言い、薙刀を強く握りながらレオナードの隣に立つ。

遠くからヴィンセントが矢を放ち、ニコラスの手足に的確に命中させている。普通の人間ならば、手足に矢が刺されば動けない。しかし、妖という存在は人間よりずっとタフだ。こんなことで動きを止められない。