あやかし戦記 葛藤の炎

レオナードが驚き、イヅナの口からも「危険だわ!」と言葉が飛び出る。そんな中、少し動揺しながらもヴィンセントが子どもたちが森の中にいる理由を言う。

「多分、ニコラスさんが子どもたちに話していた伝説の花を探しに来たんじゃないかな?その花は夜にしか花を咲かせないってニコラスさんが言っていたよ」

そう話している間にも、子どもたちの声はどんどん近くなってくる。刹那、薄っすらとしか開いていなかったニコラスの目が大きく見開かれる。そして数秒もしないうちに、必死に体重をかけていたはずのイヅナとレオナードの体は吹き飛ばされていた。

「うわっ!」

「きゃあ!」

二人の体は木に叩き付けられ、「イヅナ!レオナード!」とヴィンセントが叫ぶ。ニコラスは自身を縛っていた縄を力任せに引きちぎり、網も鋭い爪で破壊してしまう。解けないだろうと思っていた拘束を一瞬で解かれ、イヅナの目の前が絶望に染まった。

「グルル……!」

ニコラスはよだれを垂らし、ソフィアたちの声がする方を見ている。慌ててレオナードが獅子を召喚したが、もう遅い。ニコラスは声のする方へ風のように高速で移動してしまう。