あやかし戦記 葛藤の炎

レオナードがそう言いながらニコラスを見下ろし、イヅナも頷く。夜明けが来れば、ニコラスはまた人の姿に戻る。それまで拘束を解かれないようにしなければならない。

ニコラスはまだ眠っているようで、イヅナがその姿を見ていると、「イヅナ、ごめんな」とレオナードが言う。

「俺、イヅナがニコラスさんを捕まえるって話した時、無理だろって思ってた。人と妖が共存する世界なんて作れないって思ってた。イヅナはいつも震えていて、試験が合格したのも奇跡だろって心の中で思ってた。でも、こうして作戦が成功してみたら何となくだけど、共存っていうのもアリなんじゃないかなって、そんな気持ちになったぞ」

レオナードが微笑み、「そんな失礼なこと考えてたの!?」とイヅナは怒ってますといった雰囲気を出し、プイッと彼から顔を逸らす。しかし、その顔は不貞腐れたものではなく、嬉しそうな笑顔だった。

ヴィンセントが「連絡し終わったよ」と言いながら戻ってくる。あとは夜明けを待つだけだ。