あやかし戦記 葛藤の炎

「レオナード!ヴィンセント!」

イヅナが獅子の背中から降り、薙刀を手に飛び出すと、弓を構えるヴィンセントと目が合う。灰色の毛で覆われ、鋭い爪と牙を持ち、人と同じように立ち上がった人狼は、レオナードに殴りかかり、レオナードはその拳を戦鎌で必死に受け止めている状態だった。

「こいつが、いきなり攻撃してきたんだよ!多分、行方不明になった人みたいに惨殺したかったんだろうけど、俺たちアレス騎士団は簡単に殺せないぜ」

レオナードが余裕そうな笑みを浮かべ、ヴィンセントが冷静に人狼の背中に矢を命中させる。人狼は悲鳴を上げ、イヅナは叫んだ。

「教えて!どうして、どうして、人を殺さなくてはならないの?あなたは普段は人と共に暮らしているんでしょう?どうして、満月の夜は人を襲わなくてはならないの?あなたなら人と共に生きられるはず。こんなことはもうやめて!」

「イヅナ、そんな話はこの怪物には通用しないよ」

感情的になるイヅナに対し、ヴィンセントが冷たく言う。人狼はレオナードから距離を取ると、また攻撃を始めた。それにレオナードも迷うことなく反撃し、拳や牙が戦鎌に当たる音が響く。