あやかし戦記 葛藤の炎

「行かなくちゃ!」

薙刀を握り締め、イヅナは走り出す。夜道にイヅナの足音が響き、ドクドクと嫌な音が響く。この場所からレオナードのいる場所までは、障害物となるものは少ないが、かなり距離がある。

「ッ!」

息が続かず、イヅナはその場で立ち止まり、呼吸を整えた。心臓の鼓動がうるさく、身体中が熱い。

「グルル……」

低い声にイヅナが顔を上げると、レオナードの式神である獅子がこちらに走ってきた。そしてイヅナの前で立ち止まると背中を向け、乗るように促す。

「あ、ありがと!」

体力の少ないイヅナのために、レオナードが迎えとしてよこしてくれたのだ。その優しさに感謝しつつ、イヅナは獅子にしっかりと捕まる。

イヅナがしっかり捕まっていることを確認した獅子は、地面を蹴ってまるで鳥が空を飛ぶような速さで駆けていく。

森の近くまで来ると、「テメェ!」と戦うレオナードやヴィンセントの声、そして人狼の咆哮が聞こえてくる。イヅナの手に汗が滲んだ。