あやかし戦記 葛藤の炎

「ヴィンセント？」

イヅナが声をかけるも、ヴィンセントは本から顔を上げない。読書をしている時、ヴィンセントはなかなか現実に戻ってこない。

「おい、イヅナが来たぞ！！」

レオナードが肩を強く叩き、耳元で大きな声で言うと、ヴィンセントは「うわっ！」と肩をびくつかせながら現実に戻る。

「やっと現実に戻ったか」

レオナードが言い、ヴィンセントは「ごめん。色々考えてて……」と申し訳なさそうに言う。イヅナは慌てて首を横に振った。

「別にいいわ。それより、どうして図書館に私とレオナードを呼び出したの？手がかりになるようなものは見つけれてないんだけど……」

「これを見てほしい」

ヴィンセントが読んでいた本を見せる。それは天文学の本で、そのページには月の満ち欠けが描かれていた。

「事件が起きるのはいつも夜。だから、何かあるんじゃないかと思って調べたんだ。事件の共通点を見つけた。事件はいつも満月の日に起きている」

「満月……」