あやかし戦記 葛藤の炎

「そのミサンガって南にある国のものですよね。ご出身はそこなんですか?」

以前、ヴィンセントから聞いたことがある。イヅナがそう言うと、「よく知ってるね〜」とニコラスは嬉しそうにする。

「このミサンガが切れるとね、願い事が叶うんだよ」

教師にどうしてもなりたくてこの国に来たんだ、そう話すニコラスの目はどこか悲しげだ。故郷で色々あったのだろう。あまり深く聞くのはよくなさそうだとイヅナは判断し、口を閉じた。

「あの三人は、僕が担任をしてる六年生の子たちなんだ。普段は素直でいい子なんだけど、失踪・惨殺事件が始まってから村の外からやって来た人たちを警戒するようになってね。あの子たちは、村人じゃない人が犯人だって思い込んでるみたいなんだ」

ニコラスはごめんねと何度も言いながら話す。その時、ニコラスの肩に何かがついていることにイヅナは気付く。灰色の長めの毛だ。

「ニコラスさん、何かついてますよ。動物の毛ですかね」

毛はかなり硬い。村人のものではなさそうだ。イヅナの言葉にニコラスは首を傾げる。

「僕は、動物なんて家で飼ってないし、家庭訪問なんてしてないから生徒の飼ってる動物の毛がつくこともなさそうなんだけど……」