あやかし戦記 葛藤の炎

この村では一度も見かけることのなかった褐色の肌に、少しカールした黒髪、そして海を思わせる深い青の目をした壮年であろう男性が怒ってますというオーラを出してイヅナに消しゴムをぶつけた子どもたちを見ている。

「知らない人に消しゴムを投げていいなんて、一年生の頃に教わったか?」

男性がそう低い声で言うと、子どもたちは「ごめんなさ〜い!」と言いながら走っていく。男の子二人はイヅナにペコリと申し訳なさそうに頭を下げたものの、女の子はツンとした態度で廊下を歩いて行った。

「ごめんね、ジェイムズ村長の友達のお孫さんだっけ?こんなところに来ても面白いものなんてないよ?」

褐色の男性は先程とは違い、にこやかな笑顔でイヅナを見つめる。

「えっと、あなたは?」

「この学校で教師をしているニコラス・フェリアーだよ。よろしくね」

そう人懐っこい笑顔を浮かべるニコラスは、肌の色などからしてこの国の人間ではなさそうだ。その証拠に彼の腕にはカラフルなミサンガがつけられている。