私の口から慈恩というワードが出た途端、唱馬の顔つきがまた変わった。
そして、また私を引き寄せ、さっきよりもきつく抱きしめる。
まるで、自分の感情をコントロールできないみたいに。
「慈恩とさくらの間に何があったか知らないけど、僕はさくらをこんな目に合わせた慈恩を許さない。たとえ、従兄でここの次期社長であっても」
「もう… そんな事言わないで…
何もないよ、一緒に紅葉狩りに行っただけ。
それだけだよ」
コーヒーメーカーの終了を知らせるアラームが鳴って、私は唱馬の腕の中からするりと抜け出した。
でも、唱馬は、また私を抱き寄せる。
私はそんな唱馬にキスがしたいと思った。
私の事で傷ついている唱馬を慰めたい。



