トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜



「どうしよう…」

私は玄関ドアの前に立ち、唱馬を部屋に入れるかいまだ悩んでいる。
悩みながらとりあえず鍵を開けると、後ろで待っている唱馬が当たり前のようにドアを開けた。
1DKの狭い部屋に唱馬は喜んで足を踏み入れる。何の躊躇もなく。

「さくらの部屋って綺麗に片付いてるね。
シンプルで置いてる物のセンスもいい」

唱馬はいつもさりげなく褒めてくれる。
きっと、唱馬の育ちの良さがそうさせているのだろう。
素直で可愛くて真っすぐで…
今日の一連の出来事を一瞬だけでも忘れさせてくれる唱馬の優しさに、ずっと甘えていたい。
でも、私はすぐに現実に戻る。

「唱馬、コーヒーは淹れるけど、長居はダメだからね。
コーヒーを飲んでデザートを食べて、三十分経ったらフリージアに戻る事を約束して」

唱馬は面倒くさそうに「分かった」と言ってくれた。
ちょっとだけ寂しいような複雑な気分になる。自分から言っておいて。