私がコンビニから少し離れた空き地で待っていると、唱馬はニコニコしながら歩いてきた。
「美味しそうなデザート買ってきた。
さくらの部屋で食べさせて」
そう言ってコンビニの袋を嬉しそうに持ち上げる唱馬の姿を見て、私の胸は静かに震えた。
そのときめきはさざ波のように優しくて穏やかなもの。
今ならはっきり分かる。私は唱馬の事が好き。
慈恩も好きで唱馬も好きだなんて、私、頭がおかしくなったのかもしれない。
でも、私の心はそう訴えている。唱馬の存在は私のオアシスだと。
馨月亭の寮は、中途半端な時間のせいで閑散としていた。
元々、寮に住んでいる人が少ない。
皆、敷地の外に住みたがるから。
オートロックキーで正面玄関を開け、エレベーターへ乗り込んだ。
三階のボタンを押した時、私は二人の関係性を考えてしまう。
一般的に、恋愛初心者は何でも真剣に考え過ぎて、チャンスを無駄にしてしまう。



