でも、私の涙は止まらない。
やっぱり慈恩から何か言葉が欲しかった。
あのままスッと居なくなった慈恩の背中が、私への思いやりがない事を語っていた。
思いやりがないという事は、愛情もないという事。
でも、私は…
慈恩が大好きなのはもう止められない。
恥ずかしいほど涙が止まらない。
もう下瞼の痛みなど分からなくなっていた。
すると、唱馬が一つ息を吐き、そっと私を抱き寄せた。
「今日のさくらは偉かった…
慈恩だってそう思ってるよ。
だから、もう泣かないで。
もっと、顔が腫れちゃうよ…」
本当に可愛くて優しい唱馬。
唱馬の温もりは、荒んだ私の心を少しずつ癒してくれる。
すると、唱馬は片手でスマホを取り出した。
電話の相手は鰺坂さんだ。
顔が腫れてしまった私の状況を話し、早退のお願いをしている。



