私はその真っ赤なゾンビの状態で、リクライニングシートを少し起こした。
そして、スタッフが準備していたもみじ茶を手に取って、にこりと微笑む。
大きな窓の前に位置するこのリクライニングチェアは、外の景色を楽しむには特等席だ。
インスタ映えするのは間違いない。
インパクトが大き過ぎるもみじパックが受け入れられればの話だけれど。
慈恩は自分のスマホでパシャパシャと写真を撮る。
特に、斜めからのアングルには時間をかけた。
思いのほか、時間が経ち過ぎて、私の顔に貼り付いた紅葉の葉っぱが乾燥してきた。
慈恩は私のその様子に気付いてくれたのか、撮影を止め鰺坂さんを呼んだ。
二人は、部屋の隅っこに移動して、真剣に話している。
でも、その話し合いはほんの数分で終わった。
皆が注目する中、慈恩はスマホを持ってトリートメントルームから出て行った。
取り残された私達は鰺坂さんを見つめる。



