あれは、私が慈恩と紅葉狩りに行った翌日から始まった。
私は紅葉じゃないけれど、完全に慈恩に染まっていた。
それも今にも火が付きそうなくらい真っ赤に。
そんな状態の私は全てにおいて余裕がなく、その燃え上がる感情を隠すなんて絶対に無理だった。
でも、馨月亭の御曹司に恋をしたなんて、誰にも言えないし知られちゃいけない。
だって、身の程知らずと笑われるに決まっているから。
そんな中、慈恩が紅葉スパの件でフリージアにやって来た。
慈恩と唱馬は正真正銘の従兄弟で、身分には大した差はない。
のはずなのに、慈恩がフリージアに現れると、一瞬でフリージアのスタッフはピリピリ緊張し始める。
それは、ここのマネージャーと慈恩が、意見の食い違いでやり合った噂が完全に広まっているせいだった。