「この奥の方まで行けば、結構な量の紅葉の落ち葉を拾えると思います」

私はそう言いながら、黙々と軍手の手で落ち葉を拾い始める。

「慈恩様はそこで待っててくださいね」

私は慈恩がこの場所に連れて来てくれただけで感謝していた。
上流階級の京極家の人々が大切に守ってきたこの広場を、慈恩は馨月亭のために提供してくれた。(本当は私のためにと思いたいけれど、それはあまりにも図々しい)
慈恩はきっといい人で優しい人に違いない。
唱馬はあんな事を言っていたけれど…

綺麗な色の付いた落ち葉がほとんどなくなったため、私は広場から外れて奥深い木々の向こうへ行こうとした。

「そこは止めた方がいい」

振り返ると真後ろに慈恩が立っていた。