丁寧に手が行き届いた小道をしばらく歩くと、公園のような広場へ出た。
私はその光景に目を奪われた。
山の中腹くらいに位置するこの場所は紅葉の真っ只中だった。
そして、どういうわけか、この広場は色とりどりの紅葉の木々に囲まれている。
「綺麗…
でも、まだ紅葉の季節には早いのに、何でここだけ?」
慈恩は当たり前のように設置されているアンティーク風のベンチに腰かける。
「先代の頃から、この場所は、プライベートの公園みたいな感じで使ってたらしい。
そういう古い写真も何枚か残ってるからね。
だから、俺達家族も桜の季節や紅葉の季節はここで花見やらをして楽しんだ。
唱馬は知らないか…
あいつが京都へ遊びに来る時は、こういう季節じゃなかったから。
あと、紅葉に関しては、早い品種なのかな…
ごめん、そこはよく知らない。
あんまり興味がないからね」



