「紅葉スパって謳っているのなら、紅葉づくしにした方がいいと思う。
紅葉を美容ローション漬けにして、顔やら全身やらに貼りまくるとか」

紅葉を? ペタペタ? 紅葉のお寿司のように?
いやいや、それはできない。
そんな安易な考えでお客様にリスクを与えちゃダメ。
それをするのなら、紅葉の形のフェイスパックとボディパックをオリジナルで作るしかない。
紅葉の葉っぱを直で貼るなんて、考えただけでムズムズ痒くなってくる。

でも、慈恩のアイディアを完全否定する勇気はなかった。
嫌われたくないもの…
これが恋する乙女の、思考回路をラブによって占領されてしまう弱点なのかもしれない。

「そ、そうですね… いいかもしれないです…」

「いいと思うよ、インスタ映えするし、これぞ紅葉づくしって感じだし」

いやいや、お寿司じゃないんだから…
心の隅っこで、消えてなくなりそうな冷静で部分が、そんな風に毒づいている。