「は、はい、取ります…」
ヘルメットを取るだけなのに、何でこんなに恥ずかしいんだろう。
慈恩は私の事をまだ真っすぐに見ている。
そんなに見られたら、緊張し過ぎて顎ひものロックが外せない。
手が震えて顔が熱い。
きっと、私、紅葉のように真っ赤だ。
「貸してごらん…」
慈恩の両手が私の首元に伸びる。
こんなシチュエーション、坂本龍馬との妄想上の恋愛の中にもなかった。
私は息を止める。その理由は自分でも何なのか分からない。
カチッ…
慈恩はロックを外すだけじゃなく、ヘルメットまで取ってくれた。
不動像のように動かない私を見て、クスッと笑う。
「暑いなら窓開けて」



