という事で、私は唱馬と紅葉狩りに行く事になった。
馨月亭を取り囲む山々はほぼ馨月亭の社長の所有地で、従業員の出入りは許可されている。
それに、車で二十分も走れば紅葉の木が集まっている場所へ辿り着けた。
私は作業着に着替えてヘルメットを被り、スタッフ専用駐車場で唱馬を待った。
いつもはここら辺の山に詳しいスタッフと行く事が多いけれど、この十月に入ってからは唱馬と行く事がほとんどだった。
ホテル専用の軽自動車の前で待っていると、唱馬からメッセージが入った。
“さくら、ごめん
急用が入って、一緒に行けなくなった
でも、暇なスタッフを一人そこへ行くように言ってあるから
今日はそいつと行ってきて
ごめん”
私はすぐに了解と返信した。
実は唱馬は何かと忙しい。
普通のスタッフの仕事以外にもする事がたくさんある。
というか、どうして御曹司なのに私と一緒に働いているのかがいつも謎だった。



