俺はクールに微笑みながら、車を動かした。
深夜の国道は気持ちがいいほど車が少ない。
俺は運転席の窓を少しだけ開けて、キンキンに冷えた夜の風を車の中に入れ込んだ。

「寒かったら言ってね」

俺の一言にさくらは全く反応しない。
きっと、さくらの心に迷いが生じ始めているのだろう。
唱馬の顔が浮かんでいるのか?
でも、俺にとっては、そんな事どうでもよかった。
逆に、唱馬が気の毒でしょうがない。
俺と闘うなんて百年も早いんだよ。
黙り込むさくらを横目に、俺は颯爽と車を飛ばす。
もう、行く場所は決まっていた。

「ここは専務の?」

高層ビルの地下駐車場に車を入れ始めた俺に、さくらは戸惑い気味にそう聞いてきた。

「そこらへんのお店よりは居心地がいいと思うよ」

下心がないわけじゃない。
でも、それ以上にさくらと一緒に居たいだけ。
だから、さくらに選択肢を与えない。
だって、俺の家はもうすぐそこだから。