昨夜も今夜も月が光り輝いている。
こんな風に、夜の景色に心を動かされている自分に少し驚いた。
センチメンタル極まりない。

「今日は、唱馬は待ってないの?」

さくらがシートに落ち着いたと同時に、器の小さな俺はそんな事を聞いた。

「今夜は来てません。
昨日の夜、途中でお店を抜け出して、皆に迷惑をかけちゃったって。
今夜は、親戚の人達とホテルでくつろぐから来れないって言ってました」

俺は自分の方からこの話題に振ったくせに、何だか苛ついている。
自分から聞いておいて耳栓をしたくなるなんて、本当に救いようのないバカだ。
俺は運転もしていないのに、目の前にあるハンドルを力いっぱい握った。

「それで…
さくらは? 明日のシフトは?」

聞かずにはいられない。

「明日は… 休みです」

二人とも沈黙してしまう。
その沈黙は二人の肉体的な部分を刺激する。
俺はその沈黙に耐えられる自信がない。

「唱馬がいなくて、明日は休みで…」