「唱ちゃんは高梨さんの事をすごく気に入ってるみたいよ。
彼もこの馨月亭グループの御曹司なわけだし、高梨さん、彼女の座、狙っちゃえば?」
なんて、鰺坂さんは面白半分にそう言って笑った。
いえ、いえ、何かの間違いです…
そう言って肩をすくめるしかない私。
だって、絶対に何かの間違いだから。
でも、ここ最近、唱馬の私へのアプローチは鈍感な私でさえも気付くほどで
…
例えば、髪を下ろして毛先を巻いてきた時の、驚くほどのリアクション。
「さくら、可愛い! 可愛すぎるよ。
僕的にはその髪型が一番好き。
さくらの性格とのミスマッチがたまらなくセクシー。
何かぞくぞくする」
爽やかなイケメン君が子供みたいにキャッキャッと騒ぐ姿は、私の方が惚れてしまう。
セクシーとかぞくぞくするとか、私の雰囲気からそんな類の言葉が出てくるなんて、何だか信じられないけれど、最近、従兄の慈恩を見かけないだけに、唱馬の魅力に私の心もトロトロに溶けている。
冴えない私をこんなに褒めてくれる男子は、私の人生で唱馬一人だけだもの…



