夕方から夜にかけて、図書室は一番忙しい時間帯だ。
フリージアに泊まるお客様は時間を贅沢に使う醍醐味を味わいたい。
そんなノスタルジーを感じるには、この図書室は最適だった。
九時に閉室となるため、私はお客様対応が終わるとデータの打ち込みに専念した。
これくらい忙しいと、余計な事を考える暇なんてない。
だけど、九時の閉室を迎えても、まだパソコンの作業は終わっていなかった。
すると、鰺坂さんが私の様子を見に図書室へ来てくれた。

「さくらちゃん、休憩の時間よ。
別に今日中に終わらせなくてもいいみたいだから、夜ごはんを食べてきて」

「あともう少しで終わりそうなんです。
そこまでやってもいいですか?」

「自分の休憩時間が少なくなっても?」

「はい、大丈夫です。
明日だって、二宮さんが出勤できるかも分からないし、できる時に済ませておきたいんです」

鰺坂さんは苦笑いして頷いた。

「図書室は閉室の看板を出しているから、できるだけ早く終わらせる事。
分かった?」

「はい」

鰺坂さんは私の肩に優しく手を置いて、そして、図書室を後にした。