馨月亭の本館、別館、そしてこのフリージアと、それぞれで何種類かのスパを用意している。
私達フリージアのスタッフは、まだ紅葉も盛んではない今は、お客様の関心は少ないと考えていた。
でも、紅葉スパの詳細を流し始めて、その日の内に四件の予約が入った。
そのイベントの期間は、三日後の十月二十三日から始まり、十一月いっぱいの予定だ。
エステサロンのスタッフの準備は万端だったが、私が担当する紅葉が浮かぶ入浴タイムの紅葉の葉っぱがまだ全然足りていなかった。
「私、今から紅葉の葉っぱを集めてきます」
四階のリラクゼーションルームで打ち合わせをしている最中に、私は居ても立っても居られずにそう言った。
「そうだね、紅葉を浮かべるには今の量じゃ少なすぎるよね。
了解。じゃ、僕も一緒に行ってきます。
というか、この間も一緒に行ったしね」
十月からフリージアに配属になった唱馬は、どういうわけかいつも私の側にいる。
マネージャーの鰺坂さんの話では、唱馬のお世話係にどうやら私が選ばれたらしい。
それも、本人のたっての希望で。



