さっきまで落ち込んでいた唱馬は、もう、完全に荒々しい雄へと変わっていた。
恋愛初心者の私にとって、唱馬から与えられる溺れるほどの快感も包み込まれる肌の温もりも、何もかもが素晴らしく強烈だった。
気持ちと肉体は別のもの。
私は、こうやって、唱馬の肉体から逃れられない。

結局、唱馬はまた家に泊った。
入り浸りの唱馬とそれを受け入れるダメな私。
周りの人達は、何も知らない無垢な二人が恋に溺れていると笑うに違いない。
それほど、私達の生活は堕落して、二人だけの時間に執着していた。
特に、唱馬は。

「フリージアで会おう」

唱馬はそう言うと、まだベッドにいる私にキスをして出て行った。
そうか…
今日、唱馬は朝の出勤日だった。
私達は、そんな事を何も考えずに長い夜を過ごした。
唱馬が居なくなった途端、自己嫌悪の波が私を襲う。
専務と過ごした昨夜の出来事が、もう、遠い夢のように感じてしまう。
現実だったのかさえ分からなくなるほど。