「唱馬…
専務って、すごく優しい人だよ…
私には何でも話してくれるし、唱馬がいうような性格が悪いとかそんな風には見えない。
本当の事を言うと…
私、専務と初めてフリージアの図書室で会った時…
完全な一目ぼれをしたの。
初めての経験で、地球がひっくり返ったんじゃないかっていうほどの衝撃だった。
胸がキュンキュン止まらなくて、もう専務の事しか考えられなくて。
だから、専務に少しだけ惹かれているわけじゃない。
本当は、頭のてっぺんからつま先まで、私の全てで専務に惹かれている」
ここまで話して、私はハッとした。
唱馬の表情は、私が今まで見た事がないくらいに歪んでいる。
可愛らしい純真無垢な唱馬の心を、私はこれから切り刻んでしまうのかもしれない。
いや、もう切り刻んでしまった。
素直で可愛らしい唱馬の顔は、痛みを堪えている子供のように傷ついて悲しんでいる。
自分の気持ちに正直になる事がいい事だとは限らなかった。
私は唱馬に自分の気持ちをぶつけて、初めてその事に気が付いた。



