「唱馬、私…
噓、ついてた… 本当は」

「慈恩と会ってた… そうでしょ?」

淡々と問いかける唱馬の目を、私は見る事ができない。
ソファの前に立ちはだかる唱馬の脇を通って、私はベッドに腰かけた。
深夜のせいか、私達を取り巻く世界は静か過ぎた。
外の雑踏の音でさえ暗闇に隠れてしまっている。

私はいたたまれなくなって、外の空気を吸いにベランダへ出た。
ワンルームの小さな部屋は、重い空気に飲み込まれている。
とはいっても、全部、私のせいなのだけれど。
唱馬の目には、私が逃げているように映っているに違いない。
それか、自分勝手な慈恩に振り回されて、困り果てているみたいに。