私が専務と別れた時、もう深夜の十二時を回っていた。
ライトアップされた紅葉の空間は、私と専務の二人だけの世界だった。
誰も知らない。
誰にも教えたくない。
二人の秘密の花園みたいに、私にとってはかけがえのない場所になった。
専務の車の中で、また、私達はたくさんの話をした。
専務の新たな一面をたくさん発見して、もう、私は、引き返す事ができないくらい専務に魅了されている。
帰りの車の中で、私はスマホを一度も開かなかった事に気付いた。
あえてサイレントモードにしていたせいもあるけれど、スマホの存在を思い出す事もないくらいに、専務との時間に夢中になっていた。
私は専務と別れた後に、スマホを開いた。
画面が明るくなった途端、唱馬からのメッセージの量に心臓がドクンと鳴った。
「何してる?」から始まって、「さくら、大丈夫?」、「今、どこにいるの?」、「ねえ、生きてるよね?」にまで至っている。



