もし本当なら、私は水野会組長の孫になる

鳴海はこのことを知っているんだろうか
もし、知ってて私に初めから声をかけたなら、なんで孫の私を水野会の組長に会わせようとしないんだろう

“陽菜は会うことないだろうし”
昔鳴海が言っていた言葉が頭をよぎる

風呂場に戻って、湯船に貯めていたお湯の勢いを少し弱めて発信ボタンを押す
考える事は山ほどあるのに、答えに繋がりそうなものはひとつもない

乾が居ない時にかけてこい

そう言って渡された紙切れをもう一度見て、耳元でコール音を聞きながら、出たところで何を聞けばいいのかも何も考えてなくて、5コール鳴らして出ない電話を切ろうと耳からスマートフォンを離した所で、コール音ではなく男の声が聞こえる