そのまま部屋を出て、今の家族と顔を合わせないように気を付けながら家を出る。道を歩くと時々聞こえてくる「あの女の子、めっちゃ綺麗!」という言葉が苦しい。思わず逃げるように駆け出してしまった。

僕は小学三年生の頃、家族を事故で失った。その後、僕は今の家族となった親戚に引き取られたんだけど、そこから屈辱的な日々が始まったんだ。

「うちには男の子が二人いるから、女の子がほしいのよ。だから娘になってちょうだい」

そんなことを言われ、その日から女装を強要された。女の子らしい振る舞いをしないと叩かれ、筋肉がつかないように運動部に入るのを禁止されて、着たくないフリフリのお姫様みたいな服やヒールを用意されて、僕は従うしかなかった。

(男なのに男として生きられないなんて、生きている意味があるのかな?)

どうして僕は事故で死ななかったんだろう。死んでいたら、こんな思いをしなくてよかったのに……。

人の視線を気にしながら一年生の教室に入って、席に座ってそのままホームルームが始まるのを待つ。何人か話しかけてくる人がいたけど、無愛想に返した。