夜が明けるのがこんなにこわかったことがあったろうか。明日が来るのがこんなにこわかったことがあったろうか。背筋をだらだらと汗が流れ、温度を奪っていく。正午をまわってかなりの時間が経っていた。


「昨日は遅くまで宿題やってたからな」
ふぁっと欠伸を漏らしながら涼は呟いた。目が覚めると涼は着替えもせずに宿題の続きに取り掛かる。パレットに七色の絵の具を用意して筆をとる。美術で出されたポスターに色を塗るためだ。下書きのすんだそれには大きく"地球を大切に"といったありがちな言葉が並んでいた。


8月6日、テレビでは文化人たちが平和について議論を交わしていた。