「結構露骨なことするのね」
「そうか?」

普段病院で食べているランチの5倍の値段はするメニューを注文し、私と敬は再び向き合った。
さっきまで重ねられていた手はもう離れている。

「あの2人お似合いだろ?」
「うん、美男美女ね」

チクン。
胸の奥に何かが刺さる感覚。

「お前はそれでいいのか?」
敬らしくもない冷たい目で私を見ている。

「いいも何も、2人は用事があって一緒にいるだけでしょ」
「本当に?」
「ええ」

これ以上新太の邪魔はしたくない。
だから今感じているモヤモヤは胸にしまっておこうと、自分自身に言い聞かせた。

「お前はそう思っても、あっちはどうかな?」
「え?」

ニタニタと笑う敬が、私を通り越して後ろの方を見ている。
そうこうしているうちに、背後から迫ってきた殺気を含む気配が私の後ろで止まった。

「悪いが、環は連れて行くぞ」
それは怒気をはらんだ新太の声。

「止めても無駄、ですね?」

こんなに怒った新太相手にかる口をたたく敬にびっくりしていると、急に腕を引かれる。

「行くぞ」
それは有無を言わせない命令。

私は半ば引きずられるようにホテルから連れ出されてしまった。