そこに現れたのは産科の西村先生。そして、

「お疲れさま」
ビシッとスーツを着た新太。

「お疲れ様です」
私の手を放すことなく挨拶する敬は意地悪い顔。

「どうしたの2人で」
西村先生が私たちの席に歩み寄り、話しかけてくる。

「2人でランチを食べに。先生たちこそ、どうしたんですか?」

「今日は卒業した高校の記念式典があってね」
「ああ、そういえば救命部長も来るって言ってましたね」
「ええ、さっきまで一緒だったのよ」
「そうですか」

なんとも楽しそうに会話する敬と西村先生。
私は黙ってその様子を見ていた。

きっと、敬はわかっていてこのホテルのこの場所で会うように仕組んだんだ。
私と2人の所を新太に見せようとしたのか、西村先生と新太が一緒の所を私に見せたかったのかはわからないけれど、これは間違いなく確信犯。

「おい、みんな待っているから行くぞ」
私には一言も話しかけることなく、あきらかに不機嫌になった新太が西村先生を急かして2人は離れて行った。