「で、今日は副院長に頼まれてここに来たの?」

相手が私だって知っていたようだけれど、どういうつもりだろう。

「環とお見合いして来いって言われて、ここに来た」
「は?」

いや、そこは断るべきところでしょう。
いくら上司でも、おじさんでも、断ってくれないと。

「俺じゃ不満なのか?」
「え、イヤ、そういう話じゃなくて、」

私と敬は同期で、友人同士で、気心の知れた間柄。
今更お見合いとか言われても、困ってしまう。

「環は、俺が相手では不満なのか?」

動揺してしまった私の顔をマジマジと見ながら、敬がもう一度尋ねた。

「私には新太がいるのよ」
「知ってる。でも、まだ結婚したわけでも婚約したわけでもないだろ?」
「それはそうだけれど・・・」

困ったなあ、これじゃあらちが明かない。

「そもそも敬は私なんかでいいわけ?」

お互いがまだ10代だった頃からの恋愛遍歴も知っているし、好みのタイプだってわかる。
今は大人になっていて多少の変化はあるかもしれないけれど、私と敬では遠慮がなさ過ぎて喧嘩が絶えないだろうし、いい友人でいるのがベストだと思う。
きっと敬も同じ気持ちだと思っていた。

「俺は今日、環との見合いだと承知でここに来たんだ」
「それはその・・・一応会うだけ会ったら断るつもりでいるってことでいいのよね?」
「はあ?」
ギロリと敬ににらまれた。