「私は新太が好きです」

きっとナイフを向けられていた緊張感から解放されて、気持ちが高揚していたんだろうと思う。
普段なら絶対に言えないような恥ずかしい言葉を、私は口にした。

「俺も好きだよ」
頭の上から新太の言葉も降ってきた。

幸せだな。
すごく不謹慎で場違いだけれど、私は幸せだ。

「あ、そうだ」
ふと思い出して、私は口を開いた。
「何？」
少しだけ体を離して私を見る新太。

「西村先生は、大丈夫？」
「大丈夫って？」
「だって、ほら」
2人は付き合っているって聞いているし、私のことにかまいすぎれば気分だって良くないんじゃないかなと。

「何？」
新太はさっぱり意味が分からないって風に私を見ている。

「2人は付き合っているって聞いていたから」
仕方ないからはっきりと言ってみた。

「はあぁ？」
今度は新太の方が口を開けている。

別に私はいいの。何があっても新太が好きだし、側にいられるだけで幸せだから。
でも、西村先生からすれば面白くないはずでしょう。