指定された病院に隣接した公園は、かなり広く本格的な遊歩道までつけられていた。
幸いここに来るまで誰にも会うことはなかった。
点滴も外れているし、病衣とは言え持ってきてもらったジャージの上下は人目につくこともなく誰にも怪しまれずにここまでやってきた。

「和田先生」
塙くんを探しながら遊歩道を歩いていると、茂みの方から声がした。

「塙くん?」

それでもすぐに姿を見つけることはできなくて、キョロキョロとあたりを見渡す。

「こっちです」

ああ、いた。
茂みの中に隠れるように、手招きをしている。

「1人ですか?」
「ええ」
「そうですか」
それを聞いて、塙くんがフーッと大きく息をついた。

「塙くん、あなた」

一体何をしているのよ。そう𠮟りつけようとして声が止まった。
伏し目がちな塙くんの表情が、ひどく傷ついているように見えたのだ。