「環ちゃんのこと、いい加減な気持ちじゃないんだろうね？」
まじめな声で聞かれ、
「はい」
俺も真剣に答えた。

「そうか、残念だな。環ちゃんには僕の甥っ子と一緒になってほしいと思っていたんだが」
副院長が肩を落として見せる。

「すみません」
俺だって環を譲るつもりはない。

「まあいいだろう。みんなまだ若いんだから、先のことはわからない」

え？

「新太君がなんて言おうと、縁談は勧めるつもりだから」
「副院長、それは・・・」
勘弁してくださいと言いたかったが、外泊させたことを叱られに来ている以上強いことは言えない。

「大丈夫、無理強いはしない。環ちゃんが嫌だと言えばあきらめるよ」
だからそれまでは何も言うんじゃないと予防線を張られてしまった。

副院長の甥っ子って人物を俺は知っている。まじめで仕事のできる良い奴だ。
でも、だからと言って環を譲るつもりはない。