再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司

「先生、どうかしました?」

普段この時間の内視鏡室に部長が現れることなんてないから、少し驚いた。
それに、なんだか嫌な予感がする。

「和田先生、今日は日勤でしょう?もういいから上がって」
「でも、まだ病棟を見れてなくて」

担当医として受け持った以上日々の経過は自分の目で追いたい。

「いいから帰ってください」
「いや、でも・・・」

「大体忙しくて手が回らないなら事前に言ってください。まるでこっちが和田先生だけをこき使っているような言い方をされても困るんです」
すごく不機嫌そうな部長。

私だって言いたいことがないわけじゃない。
そもそも、告げ口なんてした覚えがない。
でもきっと、敬から「顔色が悪いのに忙しくしていた」とでも聞いた副院長が、部長に言ったに違いない。
副院長の差し金であるならば、素直に従ったほうがいいだろう。
これ以上強情を張ればますます部長が怒りだしそうだし。

「わかりました。すみません、お先に失礼します」
部長に頭を下げ手早く片付けを済ませると、私は内視鏡室を出た。



ああ、こんなことをされると余計に風当たりが強くなるのに。
一人頭を抱えながら、私は病院を後にした。