「副院長が出張中でよかったよ。じゃなかったらきっと、ここまで迎えに来ただろうからな」
「そう、ですね」

確かに副院長ならやりかねない。
ってことは、家にも連絡したってことか。

「副院長夫人、すごく心配していたぞ」
「後で、電話を入れます」
「そうしろ」

奥様のことだから怒られるってことはないにしても、お説教くらいはされるのかな。
それだけのことをしたんだから仕方がないけれど、少しだけ帰るのが怖い。

「明日の朝俺が送って行くから、もう少し寝ていろ」
そう言うと、私の腕をつかみ立ち上がらせようとする皆川先生。

「いえ、もう大丈夫ですから帰ります。タクシーを呼んでもらえませんか?」
このまま皆川先生のお家に泊るのはよくない気がする。

「今は夜中だぞ。朝には服のクリーニングが出来上がるし、第一そんな格好で帰ったらあらぬ疑いをかけられるだけだ」

あー、それはそうかも。
私が皆川先生のスエットを着て帰れば奥様はきっとよくない想像をするだろう。

「俺は別に構わないがお前が困るだろ」
「そうですね」

ん？
俺は困らないって、そんなことないでしょう。