ほんの数秒のことが数分にも思えるような感覚だった
「そうだね…シノくんたちは私が救えなかった伊織を救ってくれた子たちなんだ。私にとっても恩人のような子たちだよ」
「救ったって…」
何があいつにあったんだ…
「過去の伊織を救ってくれたのはシノくんたち。でも、これからのことは分からない。シノくんたちに出来ないことがこれから起こるかもしれない…」
ゆっくりと手を握られる
昨日の小さな可愛い手とは違う、色んなものを守っている手
「湊くん、私は、君が伊織を大切に思ってくれてるのなら嬉しいよ。あの子は昔からしっかりし過ぎてる…なかなか甘えられないんだ。だからこそシノくんたちの存在は大きい…君にも伊織自身を見せれるようになるといいんだけど…」
一度ギュッと握られ離れる手
「守ってほしい。もちろん、華織もね」
そう言って部屋から出て行く藤咲さん
守る…
何故かその言葉が自分の中にスッと入ってきた
「湊?お父様に何か言われちゃった…?」
「いや…」
むしろ教えてくれた
自分がどうするべきなのか
あいつの中にいる"シノ"という人物の上にいくために…


