「2時間後に予約したから、横山頼んだぞ」
藤咲さんが電話から戻ってきた
「軽いパーティーだから、正装しなくてもいいんだけど、たぶん男性社員はスーツだろうから、みんなもその方が溶け込むと思う!」
じゃあ、みんな食べ終わったみたいだしひとまず解散!
藤咲さんの声で各々立ち上がる
この後どうするかと華織が俺らに話しかける隅で、あいつがさっさと部屋を出て行こうとしてるのが見えた
「んー…伊織、怒っちゃったかなー」
俺のすぐ側にいた藤咲さんを見れば目が合った
「あはっ…聞こえた?…湊くん、伊織のこともよろしくね?…あの子には味方が少ないから…」
ドアを開け、出て行こうとしてるあいつの後ろ姿を見る
「シノって人がいるんじゃ…」
俺がそう言えば、藤咲さんは小さく笑って
「そうだね。伊織にはシノくんたちがいる…でも、逆に言えば、シノくんたちしかいないってこと」
「……伊織は、シノくんたちのこと何か言ってた?」
何か…
「大切な人だと…そう言っていました」
昨夜のあいつを思い出す
顔を隠すように覆う前髪の隙間から見える綺麗な目
そして俺のより全然小さい手


