「俺、今から出発するけど」

尚志は慌ただしく手を動かして郵便物を前カバンに積んでいた。

私は頷く。

「バイトに来てくれてありがとう。
本当に助かったよ」

尚志はそう言って口元を上げた。

「こちらこそ、ありがとう」

私も微笑む。

「三木くん達を見ていたら私もまた頑張って明日から仕事を探そうって思った。
本当にありがとうね」

尚志はホッとした様子で

「そう言ってもらえたら良かったよ」

そしてチラッと時計を見て、

「ごめん、そろそろ行かなきゃ…」

「頑張って!!」

尚志は私の言葉に笑って頷いた。

「多分、今日は有野さんが帰る時間に戻って来るのは難しい。
…本当にありがとう」

尚志はそう言って右手を上げて、くるりと出口に向いて歩きはじめた。

その後ろ姿を見送る私にもう一度、尚志は振り返って手を振った。