「やっぱり、申し込んでいるよね」

少し、焦りの表情が尚志の顔に浮かんでいる。

「どうして?」

私は首を傾げた。

「班に回ってきた名簿に名前がない」

あ、だからか…

「さっき受けた訓練が郵便課だったよ」

尚志はため息をついて頭を押さえた。

「やっぱり…
今から総務に行って変更してくるわ。
課長にも言ってたのに」

静かに怒っていた。

「そんな事、出来るの?」

私は尚志を見つめた。

「先にこっちは伝えていたし。
出来ないとか言わせない」



10年前なら、こんなにハッキリと自分の意思を伝えるようなタイプではなかった。

この月日、彼は一体どう過ごしてきたんだろう。

気になって仕方がなかったけど。

どこかでお茶しよう、とか私から言えなかった。

そういう引っ込み思案なところは私は変わっていない。